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2023/07/10

最も普遍的でプリミティブな倫理観をベースに

 私は27歳で京セラを創業しました。従業員28名の小さな会社ではありましたが、創業するとすぐに決めなくてはならないことが山ほど出てきました。「これはどうしましょう」と次々に社員が決裁を求めてきます。しかし、私はそれまでに経営の経験があったわけでもなく、経営に関する知識も持ち合わせていません。また、親戚や知人に経営者がいたわけでもなく、経営について相談できる人もいませんでした。それでも、経営者としてすべての案件に判断を下していかなくてはなりません。もし自分が間違った判断をしてしまえば、たちまちのうちに会社が傾いてしまうのではないかと、心配で眠れない日々が続きました。経営者とは孤独なものだという言葉を、私はしみじみとかみしめていました。
 そのとき、「人間として何が正しいのか」ということを判断基準にしようと決めました。それは、子供の頃に両親や学校の先生から教えてもらった「やっていいことか悪いことか」という基本的な倫理観に基づいたものです。今になって考えれば、経営について何の経験もない私が、そうした非常にプリミティブな倫理観をベースに経営を進めてきたことが、京セラを成長発展に導いたと思えるのです。もし私が、そうした明確な判断基準を持たなかったり、また若干でも経営についての経験や知識があったりしたならば、「儲かるか儲からないか」「損か得か」といったものを判断基準にしていたでしょう。また、一生懸命働くよりも、うまく妥協したり根回ししたりする術を覚えて、少しでも楽に働こうとしていたでしょう。仮に私がそのような姿勢で経営を続けていれば、決して現在の京セラの姿はなかったはずです。      
(講談社「熱くなれ稲盛和夫の魂の瞬間」より引用)


 人生・仕事の結果=「考え方×熱意×能力」が稲盛さんの有名な方程式ですが、この本にも「熱くなれ」のタイトル通り、人生を切り開く「熱意」が多く収録されています。
 しかし、今回は、上記フレーズと異なる部分に注目しました。
 変化する昨今の時代の中で、従来の判断軸では迷ってしまうような選択や誤った決断をしてしまうリスクが出てきているように感じます。経営者として常に継続する決断すべき局面においては、「損か得か」ではない、「人として正しいかどうかで貫く」選択すること、真にこの基準なら判断がブレることなくいける、そして最終的に社員にも取引先にも納得のいく結果となると私は思います。
 目先ばかりの自分の利益のみを追っていることが見透かされるような選択が現実には多々見られます。そんな中で、様々に変化し始めた今だからこそ、自分にも相手にも納得できる、こんな判断基準による決断が本当に必要とされる時代ではないかと思います。
 迷った場合の判断に、この基準で、時には勇気を持って、決断してみませんか。
 悩みながらも大きな決断はしない経営者はとても信頼できる経営者とは映りません、そんな時代への突入だと思います。
所長による経営随想コラム R0507号

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